Ryo Harada

Yuto Akagi

Haruki Kawashita

Sanshiro Sakai

Nariyuki Saito

Aaron Madlon-Kay

Tomoaki Oiki

Yuma Takeuchi

RightTouch Blog 編集部

Daichi Kanke

Yuichi Yabu

<p>2025年8月21日（木）、 <a href="https://pesess.connpass.com/event/360685/">Product Engineer Session #4</a> を開催しました。</p>
<p>普段からプロダクトを通じて、ユーザー価値をどう届けていくか考えているエンジニア／PdM／EM／デザイナーが集まり、LTとディスカッション、懇親会まで楽しい時間を過ごせました。</p>
<p>この記事では当日の様子と各LTのハイライトをお届けします。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/e3a8fdd9-0edb-4305-84e0-539fafd8f783/pes4_01.jpg" alt="会場の様子"></p>
<h3>LT1 「なんとなく使いにくい」を論理的に説明する方法 〜プロダクトエンジニアとしてUXを議論できる第一歩〜 / みきてぃさん</h3>
<iframe class="speakerdeck-iframe" frameborder="0" src="https://speakerdeck.com/player/e9518cf441fe48ea9b8e22a347cfd9c7" title="「なんとなく使いにくい」を論理的に説明する方法 〜プロダクトエンジニアとしてUXを議論できる第一歩〜" allowfullscreen="true" style="border: 0px; background: padding-box padding-box rgba(0, 0, 0, 0.1); margin: 0px; padding: 0px; border-radius: 6px; box-shadow: rgba(0, 0, 0, 0.2) 0px 5px 40px; width: 100%; height: auto; aspect-ratio: 560 / 315;" data-ratio="1.7777777777777777"></iframe>
<ul>
<li>“なんとなく”という感覚を、チームで議論可能な<strong>仮説</strong>に変換するアプローチ。</li>
<li>ユーザー行動の観察→気づきの分解→検証観点の言語化、という<strong>流れで共通言語化</strong>。</li>
<li>実例ベースで「どこで・誰が・何に困るのか」を<strong>具体化</strong>し、意思決定の土台にする。</li>
</ul>
<h3>LT2 生成AI時代におけるTiny Teamの台頭とプロダクト開発 / Kiyo Kuniiさん（OPERA TECH）</h3>
<iframe class="speakerdeck-iframe" frameborder="0" src="https://speakerdeck.com/player/49b1dbfe64e848ed903f814eb1291873" title="生成AI時代におけるTiny Teamでのプロダクト開発" allowfullscreen="true" style="border: 0px; background: padding-box padding-box rgba(0, 0, 0, 0.1); margin: 0px; padding: 0px; border-radius: 6px; box-shadow: rgba(0, 0, 0, 0.2) 0px 5px 40px; width: 100%; height: auto; aspect-ratio: 560 / 315;" data-ratio="1.7777777777777777"></iframe>
<ul>
<li>生成AIの普及で<strong>Tiny Team（少人数チーム）が世界的に台頭。スピードと効率を重視したリーンな開発・経営がコンセプト。</strong></li>
<li>採用は<strong>ジェネラリスト志向</strong>。AIをフル活用して、高い生産性で開発を進めていく。</li>
</ul>
<h3>LT3 プロダクトエンジニアとしてのキャリアを考えてみる / 赤木さん（RightTouch）</h3>
<iframe class="speakerdeck-iframe" frameborder="0" src="https://speakerdeck.com/player/d24d22a74ec24ad5a10505a5288f8218" title="PES4_プロダクトエンジニアとしてのキャリアを考えてみる" allowfullscreen="true" style="border: 0px; background: padding-box padding-box rgba(0, 0, 0, 0.1); margin: 0px; padding: 0px; border-radius: 6px; box-shadow: rgba(0, 0, 0, 0.2) 0px 5px 40px; width: 100%; height: auto; aspect-ratio: 560 / 315;" data-ratio="1.7777777777777777"></iframe>
<ul>
<li><strong>キャリアの軸</strong>としてプロダクト志向・ユーザー価値・越境（Biz/Design/CS）を自分の“核”として定義し、選択の基準に。</li>
<li>プロダクトエンジニアとして、実装/設計だけでなく、課題設定・検証設計・データ解釈・意思決定・発信の各レイヤーを横断して磨いていく。</li>
</ul>
<h3>LT4 EMになってもProduct Engineerであり続けるには / shnjtkさん（LayerX）</h3>
<iframe class="speakerdeck-iframe" frameborder="0" src="https://speakerdeck.com/player/a53ac06c880748f99e9af08ab92754b9" title="EMになってもProduct Engineerであり続けるには" allowfullscreen="true" style="border: 0px; background: padding-box padding-box rgba(0, 0, 0, 0.1); margin: 0px; padding: 0px; border-radius: 6px; box-shadow: rgba(0, 0, 0, 0.2) 0px 5px 40px; width: 100%; height: auto; aspect-ratio: 560 / 315;" data-ratio="1.7777777777777777"></iframe>
<ul>
<li>PdEに求められる<strong>越境力・オーナーシップ・ユーザー価値志向</strong>をEMとしてどう維持するか。</li>
<li>マネジメントの4P（People / Project / Platform / Product）を意識し、チームが“真の進捗”を出す仕組みを整える。</li>
<li>ユーザー接点を持ち続ける・技術から離れすぎない・役割の解像度を保つが実践の要点。</li>
<li>優先順位をつけて一歩引く。個人の開発の楽しさに没頭しすぎず、チームの成果に責任を持つ。</li>
</ul>
<h2>Product Engineer Session #5開催します！</h2>
<p><a href="https://pesess.connpass.com/event/369194/"><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/f4e2d02c-6322-44c0-8ae7-2ea528e6d5ba/89d7fcc41622b29e3e8d02a5a6bc1047.png" alt="Product Engineer Session #5"></a></p>
<ul>
<li><strong>日時</strong>：2025/11/06（木）19:30–22:00（19:00開場）</li>
<li><strong>会場</strong>：THE PORTAL MITA（東京都港区三田3-2-8 5F）</li>
<li><strong>詳細や申込みはこちら</strong>：<a href="https://pesess.connpass.com/event/369194/">https://pesess.connpass.com/event/369194/</a></li>
</ul>
<p>登壇内容も随時アップデートしていきます！ぜひご参加ください！</p>
<hr>
<h2>採用情報</h2>
<p>RightTouchでは、<strong>Product Engineer</strong>をはじめ、プロダクト価値を一緒に育てる仲間を積極採用中です。カジュアル面談も歓迎しています。ご興味があれば、ぜひ採用ページをご覧ください。</p>
<ul>
<li><a href="https://righttouch.co.jp/recruitment/engineer">エンジニア採用サイト</a></li>
<li><a href="https://righttouch.co.jp/jobs/engineer">エンジニア求人情報の詳細</a></li>
<li><a href="https://speakerdeck.com/righttouch/righttouch-company-deck-ver1-dot-0">Company Deck</a></li>
</ul>


プロダクト開発の最前線を語る「Product Engineer Session #4」を開催しました

<p>2025年6月26日、<a href="https://pesess.connpass.com/event/355670/">Product Engineer Sessionの第3回</a>が開催されました！</p>
<p>今回も4名の素晴らしい発表者の皆様にお越しいただき、プロダクトエンジニアリングに関する貴重な知見や経験を共有していただきました。</p>
<h2>イベント概要</h2>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/c79bb92e-066c-4bce-93f8-1c5bbb432066/250804-01.jpg" alt="会場の様子"></p>
<p>Product Engineer Sessionは、<strong>技術的なテーマにとどまらず、ユーザーに価値を届けるためのフルサイクルの活動の中で得られた知見や気づきを共有し合う場です。</strong></p>
<p>#1, #2に引き続き#3も盛況で、当日は20人近くのプロダクト開発に関わる、エンジニア、CTO、EMなど多様な職種の方々が集まってくれました！</p>
<p>また、裏メインコンテンツとして懇親会も毎回大変盛り上がります。狭いオフィスならではのアットホームな雰囲気を気に入ってくれる参加者の声を多く聞くことができました。</p>
<h2>当日レポート</h2>
<p>今回は10分の発表とその後に5分の質疑応答の時間を設ける形式で4人の方に発表していただきました。</p>
<p>質疑の時間では、参加者の皆さんからたくさんの質問もいただきました。</p>
<h3>LT1: 「とりあえず作るがすべてを加速させる」</h3>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/73b773f2-2b46-45c8-81ee-4405e0155bd8/250804-02.jpg" alt="「とりあえず作るがすべてを加速させる」の発表の様子"></p>
<p>発表者: <a href="https://x.com/ta1m1kam">mikamitaigaさん</a> (LayerX )</p>
<iframe class="speakerdeck-iframe" frameborder="0" src="https://speakerdeck.com/player/bf2a79325bb24199b121484fbe581387" title="「とりあえず作る」がすべてを加速させる" allowfullscreen="true" style="border: 0px; background: padding-box padding-box rgba(0, 0, 0, 0.1); margin: 0px; padding: 0px; border-radius: 6px; box-shadow: rgba(0, 0, 0, 0.2) 0px 5px 40px; width: 100%; height: auto; aspect-ratio: 560 / 315;" data-ratio="1.7777777777777777"></iframe>
<p>mikamitaigaさんからは、プロトタイピングとスピード重視の開発アプローチについてお話しいただきました。</p>
<ul>
<li><strong>動くものこそ正義。完璧を求めすぎるよりも、まず作って検証することの価値</strong></li>
<li>「とりあえず作る」ことで見えてくる課題や改善点</li>
<li>実践のためのTIPS</li>
</ul>
<p>mikamitaiga氏の発表は、動くものを作りながらプロダクトの最終的な完成度を上げていく方針について、プロダクトエンジニアならではの視点でその意義や実践方法を紹介してくれました。</p>
<p>不確実性の高いプロダクト開発において、本質的な考え方を実践に即して整理されているのが印象的で、特にスタートアップや新規プロダクト開発に携わる方々にとって非常に参考になるのではないでしょうか。</p>
<h3>LT2:「プロダクト志向なエンジニアがもう一歩先の価値を目指すために意識したこと」</h3>
<p>発表者: <a href="https://x.com/kazu_real20">kazuさん</a> (株式会社ニーリー)</p>
<iframe class="speakerdeck-iframe" frameborder="0" src="https://speakerdeck.com/player/f7786776039345979859d817353bb1fe" title="プロダクト志向なエンジニアがもう一歩先の価値を目指すために意識したこと" allowfullscreen="true" style="border: 0px; background: padding-box padding-box rgba(0, 0, 0, 0.1); margin: 0px; padding: 0px; border-radius: 6px; box-shadow: rgba(0, 0, 0, 0.2) 0px 5px 40px; width: 100%; height: auto; aspect-ratio: 560 / 315;" data-ratio="1.7777777777777777"></iframe>
<p>プロダクト開発リードのKazuさんからは、単にプロダクト志向が強いエンジニアというだけではなく、真にプロダクトして重要な点を一歩踏み込んで整理されていました。</p>
<ul>
<li>プロダクト志向で価値を出すために</li>
<li>顧客が本当に求めていることや、そうなっている背景の理解</li>
<li>プロダクト志向を意識したことで得られたこと</li>
</ul>
<p>顧客のことをよく理解し、顧客が本当に求めていることや、そうなっている背景を深く理解することでプロダクトがよりよくできることや、自分自身のオーナーシップを高めていくことにもつながることがよく理解できました。</p>
<p>また、冒頭の評価面談で率直なフィードバックを受けたエピソードはインパクトがありました。FBをきっかけに受け止めて、取り組み方を改善された点が非常に共感しました。</p>
<p>懇親会でもお話ししましたが、 <strong>「FBがない方が怖くないですか？」</strong> というお話は、非常に身につまされる部分がありました。</p>
<h3>LT3: 「プロダクト志向って何なんだろうね」</h3>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/895d0bae-0264-4111-b67f-df4f54fb6d12/250804-03.jpg" alt="「プロダクト志向って何なんだろうね」の発表の様子"></p>
<p>発表者: <a href="https://x.com/nakaakist">齋藤成之さん</a> (株式会社RightTouch)</p>
<iframe class="speakerdeck-iframe" frameborder="0" src="https://speakerdeck.com/player/1fdf2023bf4946609e643c71e7faebcb" title="プロダクト志向ってなんなんだろうね" allowfullscreen="true" style="border: 0px; background: padding-box padding-box rgba(0, 0, 0, 0.1); margin: 0px; padding: 0px; border-radius: 6px; box-shadow: rgba(0, 0, 0, 0.2) 0px 5px 40px; width: 100%; height: auto; aspect-ratio: 560 / 315;" data-ratio="1.7777777777777777"></iframe>
<p>RightTouchでテックリードを務める齋藤氏からは、プロダクト開発におけるプロダクト志向を再定義し、プロダクト思考を高めるための方針を共有してくれました。</p>
<ul>
<li>「価値ファースト」と「オーナーシップ」</li>
<li>技術力とプロダクト思考の関係性の整理</li>
<li>プロダクト志向の高め方</li>
</ul>
<p>齋藤氏の発表では、まず、プロダクト思考を再定義し、価値ファーストとオーナーシップの2点に着目した整理を行いました。また、プロダクトエンジニアを考える上で気になる、「技術力」との関係性についても、4象限グラフでわかりやすく整理されていました。</p>
<p>最後に、<strong>プロダクト思考を高めていくために、作る、知る、考えるのステップで解説</strong> し、具体的な実体験を聞くことができました。</p>
<h3>LT4: 「Our Journey to Becoming a Product Engineering Organization」</h3>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/bba35732-8182-4074-bf6a-c1d3d96ec25e/250804-04.jpg" alt="「Our Journey to Becoming a Product Engineering Organization」の発表の様子"></p>
<p>発表者: <a href="https://x.com/hirot_san">とりいさん</a>（Grooves)</p>
<p>GroovesでEMを務めるとりいさんからは、同社がプロダクトエンジニア構想について、これまでの道のりをご講演いただきました。</p>
<ul>
<li>目指すべき組織像にフォーカス</li>
<li>提供価値の質を高めていくために</li>
<li>プロダクトエンジニアリングにチームで取り組む</li>
</ul>
<p>とりいさんの発表では、目指すべき組織像を最初に定義してから、特に顧客提供価値の向上に向けて、現状の分析や、そこに向かうためのTry/Errorを理解することができました。</p>
<p>中でも、<strong>プロダクトエンジニアリングは「個人やエンジニア」にとどまらずチーム全体として高めていくものでは？</strong> という仮説は新たな視点を感じました。PdMやデザイナーも巻き込んだ取り組みについて、今後の実践経験もぜひまたお伺いしたいと思いました。</p>
<h2>懇親会の様子</h2>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/2101d3e2-d47f-43d1-9182-d4d3e574fa8c/250804-05.jpg" alt="懇親会の様子"></p>
<p>裏メインコンテンツの懇親会です。小規模会場ならではのアットホームな雰囲気の中、ビールサーバーで注いだビールを片手に、今回もかなり賑わいました！</p>
<p>発表者だけでなく参加者の皆さんも、経験豊富かつプロダクトエンジニアリングに思いを持った方に多く参加していただいており、どなたと話しても有意義で熱い情報交換をすることができました。</p>
<p>より多くの方に繋がりを作ってほしいという観点から、今回は立食形式にして、なるべくグループが流動的になるように工夫をしてみました。</p>
<p>より実りのあるコミュニティにしていくため、今後も改善を重ねていきたいと考えています。</p>
<h2>おわりに</h2>
<p>Product Engineer Session #3も、前回に引き続き非常に充実した内容となりました。プロダクトエンジニアリングという分野がますます注目を集める中で、このようなコミュニティイベントの価値はさらに高まっていくと感じています。</p>
<p>そして、<a href="https://pesess.connpass.com/event/360685/">Product Engineer Session #4</a> の開催は8/21(木)に決定いたしました！</p>
<p><a href="https://pesess.connpass.com/event/360685/"><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/864955f7-4534-40f2-bbbb-b4f05eec9618/pes4.png" alt=""></a></p>
<p>本記事公開 (8/7) 時点では定員が埋まっておりますが、当日キャンセルなどもありますので、興味がある方は諦めず参加申し込みをお願いいたします！</p>
<p>改めまして、発表者の皆様、参加者の皆様、本当にありがとうございました。</p>
<p>次回のProduct Engineer Session #4も、より多くの学びと気づきを共有できるイベントにしていきたいと思います。</p>
<h2>積極採用中！</h2>
<p>RightTouchではカスタマーサポート市場の改革に挑むエンジニアを採用中です！</p>
<p>もし興味があれば、ぜひお話ししましょう！</p>
<ul>
<li><a href="https://righttouch.co.jp/recruitment/engineer">エンジニア採用サイト</a></li>
<li><a href="https://righttouch.co.jp/jobs/engineer">エンジニア求人情報の詳細</a></li>
<li><a href="https://speakerdeck.com/righttouch/righttouch-company-deck-ver1-dot-0">Company Deck</a></li>
</ul>


プロダクトエンジニアのコミュニティ「Product Engineer Session #3」開催レポート

<h1><strong>はじめに</strong></h1>
<p>こんにちは。RightTouch のAIエンジニアの原田です。</p>
<p>今回は、弊社の取り組みについてお話しする機会をいただき、ファインディ株式会社様が主催する「<a href="https://ai-engineering-summit.findy-tools.io/">AI Engineering Summit 2025</a>」に、弊社の CTO である 籔 と共に登壇させていただきました。</p>
<p>弊社は組織の規模としては決して大きくはなく、限られたリソースの中で価値となるロジックを着実に作っていくにはどうすればいいか、日々試行錯誤を繰り返しています。</p>
<p>特にプロダクトのロジック開発を担当するいわゆるAIエンジニアやデータサイエンティストとしての役割を持つメンバーは私を含めて2人しかいませんが、日々色々な物事と向き合ってロジックの開発をしています。</p>
<p>今回の登壇では、こうした環境下で私たちが大切にしているロジックの開発思想を、同じくプロダクト開発に従事されているみなさんに共有したいという思いからお伝えしました。</p>
<p>本 note では、この登壇の模様を振り返りながら、当日の様子や発表内容、そしてイベント全体を通じて感じたことを自身の視点からレポートしたいと思います。</p>
<h1><strong>AI Engineering Summit とは</strong></h1>
<h3><strong>AI/LLM プロダクト開発の実践者たちの集う場所</strong></h3>
<p>「AI Engineering Summit」は、その名の通り AI を研究対象としてだけでなくプロダクトに実装し価値を届けるための「エンジニアリング」に焦点を当てた、国内でも屈指の技術カンファレンスです。</p>
<p>今年のテーマは「LLM・AI エージェントの活用と開発の最前線」でした。</p>
<p>Siri の共同創業者であるアダム・チェイヤー氏による基調講演をはじめ、名だたる企業の CTO や第一線のエンジニアたちが集結し、まさに技術の最先端がぶつかり合う場でした。</p>
<p>本イベントはオンラインで開催されましたが、事前エントリーは 2300 人を超えていたと伺っており、当日は 2700 人を超える参加者がいたと聞いています。AI という技術が単なるバズワードから、いかにしてビジネス価値に繋げるかという実践的な「How」のフェーズへと業界全体の関心が移行していることを肌で感じました。</p>
<p>登壇したセッションは 13:00~13:40 分の枠で、その枠では 3 つの Room に分かれたオンライン配信だったので、弊社の登壇枠もおそらく 300 ~ 500 名以上の方にご覧いただけていたのではと思います。</p>
<h1><strong>当日の登壇の雰囲気</strong></h1>
<h3><strong>配信の雰囲気</strong></h3>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/0577a737-209a-46e8-b62b-1f020d2811ab/%E3%82%B9%E3%82%AF%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%B3%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%83%E3%83%882025-07-2417.36.56.png" alt="スクリーンショット2025-07-2417.36.56.png"></p>
<p>当日は Vimeo を使ったオンライン配信でした。オフィスでは、チームのメンバーが会議室に集まって「鑑賞会」を開いてくれていました。</p>
<p>社内 Slack にはリアルタイムで応援の絵文字やコメントが飛び交っており、私自身は自宅から参加しましたが皆さんのサポートを強く感じることができました。</p>
<p>当日のスライドやアーカイブは下記をご覧ください。<br>
<a href="https://findy-tools.io/events/338cda12e34be8dde254">https://findy-tools.io/events/338cda12e34be8dde254</a></p>
<h1><strong>登壇内容</strong></h1>
<p>ここからは、当日お話しした内容の核心部分をより深く掘り下げていきたいと思います。</p>
<p>セッションタイトルは「生成 AI はカスタマーサポートをどう変えるか？ - 顧客価値に繋げる非構造データとの向き合い方-」というタイトルで、技術先行ではなくあくまで顧客価値を起点とした AI ロジック開発の思想と実践についてお話ししました。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/2d50201a-b2fb-44bc-bccf-861234e5c761/ai_engineering_summit_yabu_pdf1.png" alt="ai_engineering_summit_yabu_pdf1.png"></p>
<h3><strong>カスタマーサポートの課題と非構造化データ</strong></h3>
<p>まず、弊社が事業を展開するカスタマーサポート領域の特性について説明しました。この領域では、顧客との応対履歴、オペレーターが参照する業務ドキュメント（マニュアルや FAQ）、さらには通話音声といった多種多様な「非構造化データ」が日々大量に生まれています。</p>
<p>そして、顧客が抱える本質的な課題は単一のデータソースに存在するわけではありません。例えば、「ある製品の特定機能に関する問い合わせが増えている」という事実は応対履歴データだけを見ていてもわかりません。その問い合わせに対して、オペレーターがどのマニュアルのどの部分を参照して苦労しているのかという業務ドキュメントの利用状況や、電話応対の時の音声データを組み合わせることで、初めて課題の全体像が浮かび上がってきます。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/581de60e-7a73-4bed-bae3-34b2585fa60d/ai_engineering_summit_yabu_pdf2.png" alt="ai_engineering_summit_yabu_pdf2.png"></p>
<p>このように、複数の非構造化データが複雑に絡み合った中からいかにして顧客課題を正確に捉えプロダクトの価値へと昇華させるかを考える必要があり、これはロジックを考える上での重要な前提です。</p>
<h3><strong>弊社の 2 つの事例に見るロジック開発の思想</strong></h3>
<p>あらゆるロジックを考える上でLLMの存在は当然無視できません。また、非構造化データの扱いはLLM の登場により劇的に容易になりました。</p>
<p>しかし、弊社では「LLM に丸投げすれば全てが解決する」という安易な考え方を採用しません。その思想を体現する 2 つの具体的な開発事例を紹介しました。</p>
<h3><strong>事例 1：業務ドキュメントの検索</strong></h3>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/e79cba31-753b-417d-a57c-c699b4ce1298/ai_engineering_summit_yabu_pdf3.png" alt="ai_engineering_summit_yabu_pdf3.png"></p>
<p>顧客の業務によっては、オペレーターが参照するドキュメント検索において 1 秒以下の応答速度と高い検索精度が求められます。このような要件下で、一般的に用いられる RAG（Retrieval-Augmented Generation）のような LLM が検索結果を解釈・生成するアーキテクチャはレイテンシの観点から最適とは言えません。</p>
<p>そこで、RAG や Reranker といった技術に頼らずベクトル検索そのものの性能を極限まで高めるアプローチを選択しました。ここで最も重要かつ困難なのが、巨大なドキュメントを検索クエリと適切にマッチするように分割する「チャンキング」の戦略を立てることであり、既存のライブラリをただ適用すれば済む話ではありません。</p>
<p>クエリと検索対象の関係性を深く洞察しどう分割すれば意味的にもっともヒットしやすくなるかを、実際のドキュメントデータを一つ一つ目で見て以下を自分の頭で考え抜く必要があります。</p>
<p>この着実な戦略設計こそが、技術選定以上にロジックの価値を決定づける核心部分であると考えています。</p>
<h3><strong>事例 2：堅牢なドキュメント構造化</strong></h3>
<p>もう一つの事例は、顧客が作成した多種多様なフォーマットの業務ドキュメント（Office ファイルなど）を、プロダクトで活用可能な構造化データに変換する課題です。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/0baef8b7-e087-4fa8-89a5-bc8467f84a23/ai_engineering_summit_yabu_pdf4.png" alt="ai_engineering_summit_yabu_pdf4.png"></p>
<p>当初、マルチモーダルな LLM の能力に期待しその活用を試みました。確かにその性能には目を見張るものがありましたが、複雑なレイアウトのドキュメントに対して安定した結果を得ることや、なぜ特定の抽出に失敗したのかをデバッグすることの難しさに直面しました。プロダクトとして提供するには、この「ブラックボックス性」は致命的です。</p>
<p>そこでロジックの方針を転換しました。まず、基本的な要素（テキストブロック、表、画像など）の抽出には LLM を使わず、従来の画像処理やレイアウト解析といった、確実でデバッグ可能なデータ解析技術を組み合わせたロジックを構築しました。その上で、確実に抽出できた要素間の意味的・位置的な関係性を解釈しグルーピングして構造化する部分に限定して LLM を活用したのです。</p>
<p>この 2 つの事例は、偶然選ばれたものではありません。前者は特定の業務要件（速度）を満たすために LLM 的なアプローチを意図的に回避した例であり、後者は別の業務要件（堅牢性・デバッグ容易性）を満たすために一度は試した LLM から戦略的に後退した例です。</p>
<p>これらは表裏一体であり、「最新技術に飛びつくのではなく、制御可能性を最優先に考え課題解決のために最適な手段を主体的に選択する」という私たちのロジック開発に対する姿勢を示しています。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/9de83711-6b3a-49bf-9b08-594c70d174da/ai_engineering_summit_yabu_pdf5.png" alt="ai_engineering_summit_yabu_pdf5.png"></p>
<h3><strong>顧客価値の絶対的優先</strong></h3>
<p>では、なぜこういった一見大変に見えるアプローチを積極的に実行するのかですが、その理由はロジック開発における優先順位にあります。</p>
<p>ロジック開発においては、理解すべき要素を「① 顧客の業務」「② 課題・データ」「③ 技術」の 3 つに分類し、① を最優先事項としています。</p>
<p>顧客がプロダクトにお金を払うのは、その裏側でどんなに高度な AI 技術が使われているかに対してではありません。自分たちの業務がどれだけ効率化・高度化されるかという「価値」に対してです。したがって、ロジック開発は常に「この機能は顧客の業務をどう変えるのか？」という問いからスタートします。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/4f1171ea-6964-44a1-8099-2a2a3e99567f/ai_engineering_summit_yabu_pdf6.png" alt="ai_engineering_summit_yabu_pdf6.png"></p>
<p>この視点に立つと、業務における具体的なアプローチと目標も以下のように自ずと明確になります。</p>
<ul>
<li>顧客へのデモでは、技術の凄さではなく価値が確実に伝わること。</li>
<li>そこから得られるフィードバックを最速でロジックに反映し、業務解像度を上げ続けること。</li>
<li>データを直接見て、データにないエッジケースまで想像を巡らせること。</li>
<li>そして、「万能な技術」という幻想を捨て、実用性を第一に考えたロジックを構築すること。</li>
</ul>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/01f6e817-c797-458e-b732-d077b6d7f5bc/ai_engineering_summit_yabu_pdf7.png" alt="ai_engineering_summit_yabu_pdf7.png"></p>
<p>そして、このアプローチこそが顧客課題をプロダクトの本質的な価値へと確実に繋げる唯一の道だと信じています。</p>
<h3><strong>LLM との規律ある向き合い方</strong></h3>
<p>最後に、こうした思想に基づいた上での LLM との向き合い方についてフレームワークを提示しました。</p>
<p>まず、LLM を採用するか否かを常に意識的に判断します。LLM が真価を発揮するのは、従来のルールベースや統計的モデリングでは扱いきれなかった複雑な「構造化」の課題です。一方で、生成結果に数学的な根拠が求められる課題や品質が厳格に問われる領域では、依然として古典的なアプローチが重要です。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/dc1b5afd-4c85-482b-aaa6-e55695ee4a65/Cursor_%E3%81%A8_ai_engineering_summit_yabu_pdf8.png" alt="Cursor_と_ai_engineering_summit_yabu_pdf8.png"></p>
<p>そして、LLM を使うと決めた場合でも「課題分解アプローチ」を徹底します。登壇の中ではロジックの複雑度を 3 つのレベルで定義しました。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/f35e7590-bb7f-4784-a992-d64557fb6b31/ai_engineering_summit_yabu_pdf9.png" alt="ai_engineering_summit_yabu_pdf9.png"></p>
<ul>
<li>Level 1: 単一ツール（例：要約、翻訳）</li>
<li>Level 2: ワークフロー（例：抽出 → 分類 → 要約といった一連の処理）</li>
<li>Level 3: エージェント（状況に応じてツールやワークフローを自律的に選択・実行）</li>
</ul>
<p>昨今話題の自律型エージェント（Level 3）も、決して魔法ではありません。</p>
<p>それは Level 1、Level 2 で一つ一つ精度を担保して作り上げた信頼性の高い「ツール」を LLM が適切に選択・オーケストレーションすることで初めて成立するものです。</p>
<p>複雑な課題を LLM に丸投げしうまくいかなかった時に「技術の限界」と結論づけるのは顧客に対する不誠実です。課題を粘り強く分解し確実な部品を一つ一つ丁寧に作り上げそれらを組み上げていく、この地道なプロセスこそが本質的な価値を生み出すというメッセージで発表を締め括りました。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/70b1e69c-2938-44cf-bb81-a957616409e6/ai_engineering_summit_yabu_pdf10.png" alt="ai_engineering_summit_yabu_pdf10.png"></p>
<h1><strong>質疑応答で感じた世の中のエンジニアの直面している課題感</strong></h1>
<p>発表の後、質疑応答の時間で想定よりも多くの質問をいただきました。</p>
<p>寄せられた質問は 15 件近くに及びましたが、質疑応答に応える中で世の中のエンジニアがロジック開発で直面している課題感についてリアルな声を聞くことができました。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/374dbbaa-47ab-450c-b421-3b99bc7662e7/image12.png" alt="image12.png"></p>
<p>以下は実際に質疑応答で実際に来た質問とそれに対する私たちの回答です。</p>
<h3><strong>「ハルシネーションリスクをどう回避しているか」</strong></h3>
<p>モデルのチューニングだけでなく、システム設計で解決する。出力の「出口」（FAQ や有人窓口への誘導など）を制御し、誤りの影響範囲を限定する。</p>
<p>LLM の思考過程での誤りは、ワークフローの中で個別に解決する。(籔)</p>
<h3><strong>「このマインドをどう社内に浸透させたか」</strong></h3>
<p>目に見える成果を通じて伝播する。ロジック開発者がこの思想を実務で体現し、その成果物を通じて組織に影響を与えていく。（原田）</p>
<h3><strong>「LLM からルールベースに戻した事例は何か」</strong></h3>
<p>まさに今回のドキュメント構造化の事例。複雑な実データに対するデバッグ容易性、信頼性、制御性を確保するため、純粋なマルチモーダル LLM からハイブリッドアプローチに移行した。特定の技術に固執せず、課題解決という目的に対して常に最適なツールを選択する。（原田）</p>
<h3><strong>「ロジックのアーキテクチャ設計はどうしているか」</strong></h3>
<p>「基盤化」を意識する。プロダクト戦略に基づき、プロダクト横断で汎用的に使いまわせるロジック部品を構築する。スケール、持続可能性、再利用性を見越して設計する。堅実なソフトウェア工学の規律こそが、高度な AI システムの土台となる。（籔）</p>
<p>これらの問いは、まさに私たちが日々向き合い、今回のプレゼンテーションで問題提起しようとしたテーマそのものでした。抽象的な技術論ではなく、実装の泥臭さや組織論にまで踏み込んだ質問の数々は、視聴者の多くが私たちと同じように AI をプロダクトに組み込む現場で格闘しているエンジニアであることを示唆していました。</p>
<p>自分たちの思想が決して独りよがりなものではなかったのだと深い手応えを感じました。</p>
<h1><strong>終わりに</strong></h1>
<p>今回の登壇は、 RightTouch で私たちが日々実践している顧客価値の実現を最優先する AI ロジック開発のスタンスと、その重要性を言語化し社外に発信する絶好の機会となりました。そして、質疑応答での対話はこのアプローチが間違っていなかったという確信を与えてくれました。</p>
<p>技術の流行り廃りに惑わされることなく、目の前の顧客、目の前のデータ、そして解くべき課題に真摯に向き合うという、「当たり前」を愚直にやり続けることの価値を改めて認識することができました。</p>
<p>これからも、この信念を持ち続けながら非構造化データという価値の源から顧客にとって本当に価値のあるロジックを掘り出し続けていきたいと思います。</p>
<p>最後になりましたが、このような貴重な機会をくださった ファインディ株式会社様、そして発表に最後まで耳を傾けてくださった全ての視聴者の皆様に、心より感謝申し上げます。</p>
<p>ありがとうございました。</p>
<h2>積極採用中！</h2>
<p>RightTouchではカスタマーサポート市場の改革に挑むエンジニアを採用中です！</p>
<p>もし興味があれば、ぜひお話ししましょう！</p>
<ul>
<li><a href="https://righttouch.co.jp/recruitment/engineer">エンジニア採用サイト</a></li>
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</ul>


「生成 AI はカスタマーサポートをどう変えるか？ - 顧客価値に繋げる非構造データとの向き合い方-」AI Engineering Summit 2025 登壇レポート

<h2>はじめに</h2>
<p>RightSupport by KARTE(以下RightSupport)には簡単にサポートサイトを立ち上げる機能があり、<a href="https://help.rightsupport.karte.io/">RightSupportのサポートサイト</a>もその機能を利用して構築されています。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/91547749-c532-44ad-8d35-4223aa7f72c5/250626-01.jpg" alt="RightSupportのサポートサイトのキャプチャ"></p>
<p><span class="caption">RightSupportのサポートサイトのキャプチャ</span></p>
<p>サポートサイト機能はNext.jsで静的生成したファイルを配信する仕組みで運用していたのですが、いろいろな課題が出てきてサーバーでSSRへと移行をしました。先日、無事にアーキテクチャの移行が完了したので、SSGでぶつかった課題やどうやってSSRに移行したのかその裏側を書こうと思います。</p>
<h2>サービス概要</h2>
<p>RightSupportは施策を実現するために「アンサー」と称してクライアントのFAQやナレッジなどの記事を管理する機能があります。外部から定期的に取り込むことはできますが、“正” のFAQデータを預けてもらうとユーザーにとっても運用が楽です。</p>
<p>せっかく“正”のデータを預かっているのだから、誰もが必要とするFAQサイトを簡単に立ち上げることができたら嬉しいはずです。これが出発点でした。</p>
<p>ホスティングする内容は割とシンプルで更新頻度が少ないので、静的生成にどんぴしゃなユースケースだと思い、初期版は次のようなアーキテクチャに決めました。</p>
<ul>
<li>更新がある都度、サイト全体をNext.jsで静的生成（SSG）する</li>
<li>生成されたサイトをAWS S3に上げて前にCloudFrontをかます</li>
<li>管理画面の操作に応じてRoute 53とACMのAPIをバックエンドから叩いて弊社ドメインのサブドメインをCloudFrontに向けたり証明書を発行したりする</li>
<li>独自ドメインを使う場合の証明書まわりを含む諸々のDNS設定を管理画面から提供する</li>
</ul>
<p>結果、サイトを簡単に立ち上げられ、<strong>デプロイ後は爆速でAWSそのものがコケなければ絶対落ちないFAQサイト機能</strong>ができました。</p>
<h2>課題続出でSSRへの移行を検討</h2>
<p>この構成でサービスを運用しているうちに次の欠点が見つかりました。</p>
<ol>
<li>完全SSGのため、ビルド時間がFAQ数に比例して増えてしまい、<strong>編集からサイトへの反映までの時間がだんだん伸びました。</strong></li>
<li><strong>バックエンドサーバがない手軽さの反面、認可・認証が実装しづらかった</strong>です。CloudFront関数やLambdaである程度がんばれたかもしれませんが、制限が厳しく、知見があまりない中で「サイトを本番運用する前に手軽に限定公開するためのBasic認証」がやっとのことでした。</li>
<li>サイトの数だけCloudFront distributionを立ててCloudFront関数を作るという、王道からだいぶ外れた仕組みのため、<strong>AWSの様々なリソース枯渇に悩まされる運命を辿りました</strong>。上限緩和を申請しても“裏上限”があり、そのまま進んだらAWSリソースの自前ロードバランシング的な仕組みを入れる必要が出てきたはずです。</li>
<li>ビルド処理はなんちゃって手作りジョブキューみたいな仕組みで管理していて、割とバグの温床となっただけでなく、<strong>サーバへの負荷が高かった</strong>です。ちゃんとしたジョブキューシステムに載っければよかったと反省しています。</li>
</ol>
<p>この中で3,4は運用者マターなので顧客には関係がないですが、顧客目線で1がかなり目立つ課題でした。<strong>コンテンツを編集したら即反映が当たり前の時代なのに、いけてないと反省しました。</strong></p>
<p>そこでSSGからSSR、つまりサーバを立てる形に舵を切りました。</p>
<p>サーバを運用するデメリットを呑めば、それ以外の欠点が全部吹っ飛びます。</p>
<h2>どうやって移行したか</h2>
<p>Next.jsはサーバ機能も備わっていて、SSGとSSRが両方できるので、「モードを切り替えればいいじゃん」と安易に妄想してしまうかもしれませんが、そう簡単にはいきません。なぜなら、前提が真逆だからです。</p>
<p>SSGしていた仕組みでは、「全データを集めておいて必要なものを取捨選択して生成しちゃう」という世界でした。今度SSRでは次のようになります。</p>
<p>例えば <code>https://hoge.example.com/faqs/my-faq/</code> というURLを踏んだらNext.jsサーバがリクエストを受けます。</p>
<p>このサーバはマルチテナントなので、まずどの顧客のデータを見ればいいのか特定できなければなりません。</p>
<p>Next.jsのmiddlewareの中でHostヘッダーを見て <code>/hoge.example.com/faqs/my-faq/</code> という形にパスを書き換えて <code>/pages/[domain]/faqs/[slug]</code> のNext.jsページに当てはめます。</p>
<p>これでdomainがhoge.example.comでmy-faqという名前のFAQであるという２点の情報から、必要最低限のリソースをピンポイントで効率よくとってくるという構図です。</p>
<p>難点をかいつまんで紹介すると、</p>
<ul>
<li>RightSupportのドメインオブジェクトは複雑なものもあって、このデータフローを実現するために<strong>利用中のリソースを特定するロジックの作り込みがやや大変</strong>でした。</li>
<li>Next.jsアプリケーションは3つのランタイムが動いていて、<strong>場所によってNode.jsの機能が使えなかったりで割と制限がシビア</strong>でした。相性のいいDBライブラリの特定（既存の仕組みが相性悪いとわかるまでの検証）も時間を要しました。特にmiddlewareでDBが叩けなかったのが全体のフローに大きく影響しました。</li>
<li>主な取得ロジックができた段階ではサイトは動いていましたが、<strong>パフォーマンスはSSGとは雲泥の差</strong>でした。調査したらDB接続に関する凡ミスと、DBネットワークとのVPC peeringで概ね解消しましたが、突き止めるまでのフットワークに時間がかかりました。</li>
<li>サーバを動かすクラウドの選定。サーバ自体はどこでも動かせますが、うまくいけば大量のドメインが向けられるので<strong>大量のTLS証明書を設定できるのはマスト</strong>です。幸いGoogle Certificate Managerの証明書マップエントリー、つまり1つのロードバランサーに紐付けられる証明書の数などが十分に多く、安心してサーバをGoogle Runに載せることにしました。</li>
</ul>
<p>上記を経てSSRサーバで動く新サポートサイトの誕生が迫りましたが、そこで2つの難関が現れました。</p>
<h3>SSGの同時運用</h3>
<p>SSR版の開発をゴリゴリ進めている中、SSG版の改修がある程度行われていました。</p>
<p>最初は両方でUIコンポーネントを共有する構想もあったのですが、実現が難しくて諦めました。</p>
<p>代わりにどうしたかというと、コード変更を検知して、なるべく差分を自動で適用する仕組みを作ってCIで運用しました。</p>
<ol>
<li>SSG版を触ったPRが上がると、<strong>前回同期したコミット以降の差分をCIが見る</strong></li>
<li><strong>差分があったら、エラーログを出して担当者を巻き込むよう指示する</strong>と同時に、ローカルsyncコマンドを案内する</li>
<li>ローカルで叩くsyncコマンドを用意しておいて、<strong>軽微な変更なら素早くSSR版にも適用できる</strong></li>
</ol>
<p>こんな半自動な形でSSR版の完成、SSG版のフィーチャーフリーズまでなんとか事故なく漕ぎつけました。</p>
<h3>悪魔のDNS</h3>
<p>SSR版が爆誕しても、SSG版のクライアントを勝手にマイグレーションできるわけではありません。</p>
<p>なぜなら独自ドメインを使っている場合はクライアント所有のDNSを変更してもらう必要があるからです。</p>
<p>DNSが厄介な理由はいくつもあります。</p>
<ul>
<li>比較的詳しい人でも滅多に触らないので思い出しながら作業したり案内したりせざるを得ません。</li>
<li>弊社としてDNS設定を代行できるわけではなく、必要な値を伝えることしかできません。顧客は内部でハンドリングできても詳しい担当者がいる確率が低く、外部に委託している場合は作業のリードタイムが長くなります。</li>
<li>操作方法は先方のDNSプロバイダによるので画面操作の案内ができません。</li>
<li>今時は変更はすぐ反映される印象を受けますが、「最大72時間かかる」と案内されることもよくあり、反映が遅いのか何かを間違えたのか判断しにくいことがしばしばあります。今回はDNSの新規設定ではなく、SSRへのマイグレーションなので設定変更であるという一捻りもありました。</li>
</ul>
<p>SSG版で案内したのは次の2つ：</p>
<ol>
<li>AWS Certificate Managerの証明書発行用のCNAMEレコード</li>
<li>ドメインをAWS CloudFrontに向けるCNAMEレコード</li>
</ol>
<p>ですが、今回は次の2つに変わります：</p>
<ol start="3">
<li>Google Certificate Managerの証明書発行用のCNAMEレコード</li>
<li>ドメインをGoogle CloudのLBに向けるAレコード</li>
</ol>
<p>ここで惜しくも予想できなかった落とし穴として、上記2と4は共存できないので、顧客のDNS管理画面の仕様によっては設定がしれっと失敗したり、エラーやガイダンスが表示されても気づけなかったりで、結果として4の設定に失敗するケースが続出しました。</p>
<p>弊社サポートサイトの記事やサクセスチームからの案内、移行フローの改善（DNS変更の自動検知）などで挽回して、<strong>SSR版の爆誕から8ヶ月かけて全てのクライアントのサイトの移行が無事に完了しました。</strong></p>
<h2>おわりに</h2>
<p><strong>なるべくSSGにしてサーバの負担を減らす世の中の流れとは逆方向に進めたのは少し意外性のある話かもしれません。</strong></p>
<p>ですが、現段階ではメリットが大きいと感じており、技術選定や方針策定を行う際はサービスの性質を見極める必要性を改めて実感させる案件でした。</p>
<h2>積極採用中！</h2>
<p>RightTouchではカスタマーサポート市場の改革に挑むプロダクトエンジニアを採用中です！</p>
<p>もし興味があれば、ぜひお話ししましょう！</p>
<ul>
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<li><a href="https://righttouch.co.jp/jobs/engineer">エンジニア求人情報の詳細</a></li>
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</ul>


Next.jsでマルチテナントのサイトホスティング -SSGからSSRへの移行の裏側-

<p>こんにちは、RightTouchでプロダクトエンジニアをしている赤木です。</p>
<p>5月23日・24日、ベルサール神田にて開催された TSKaigi 2025 に現地参加 &amp; 登壇してきました。</p>
<h2>TSKaigiとは</h2>
<p>TSKaigiは、TypeScriptに関する日本最大級のカンファレンスです。</p>
<p>TSKaigi 2025は、オフライン会場に加えオンラインでの同時配信もあり、2日間にわたるイベントでした。</p>
<p>会場には600人を超える人々が来場し、三つのセッションルームと数多くの企業ブースで大いに盛り上がっていました。</p>
<p><a href="https://2025.tskaigi.org/">https://2025.tskaigi.org/</a></p>
<h2>登壇への経緯</h2>
<p>私は今まで登壇経験がほとんどありません。</p>
<p>TSKaigiほどの規模になると「自分なんて」という気持ちがあり、登壇など考えたこともありませんでした。</p>
<p>しかし、社内の発信活動や「コンフォートゾーンを超え続ける」というRightTouchのカルチャー、社内メンバーの後押しもあって、TSKaigiでのLT登壇につながりました。</p>
<p>私が所属するRightTouchでは、基本的にフルTypeScriptで開発をしています。フロントエンドはReact、バックエンドはNode、インフラはCDK(TS)といった感じです。</p>
<p>そのため、TypeScriptに関する情報発信・共有や交流を目的として、TypeScriptの大規模なイベントであるTSKaigiにCFPを提出してみることになりました。</p>
<p>個人的に興味があったWasmやRustを絡めた内容での発表をしてみようと思い、Wasm x TypeScriptでCFPを提出し、見事採択されました。</p>
<h2>登壇当日</h2>
<p>私の登壇はDay 1の夕方、アセンドトラックで行いました。</p>
<div><div style="left: 0; width: 100%; height: 0; position: relative; padding-bottom: 52.5%; padding-top: 120px; margin-bottom: 16px"><iframe title="Wasmを用いて他言語資産をTypeScriptで活用する | TSKaigi 2025" data-iframely-url="https://cdn.iframe.ly/api/iframe?app=1&url=https%3A%2F%2F2025.tskaigi.org%2Ftalks%2Fyutoak&key=878c5bef402f0b2911bf6d4ce6261abd" style="top: 0; left: 0; width: 100%; height: 100%; position: absolute; border: 0;" allowfullscreen></iframe></div></div><script async src="https://cdn.iframe.ly/embed.js" charset="utf-8"></script>
<p>発表内容は、いろんな言語で書いたコードをWasmにコンパイルして、そのWasmからjcoというツールでTypeScript用のコードを生成し、TypeScriptからそのWasmを使う方法の解説と具体例の紹介です。</p>
<div style="left: 0; width: 100%; height: 0; position: relative; padding-bottom: 56.1972%; margin-bottom: 16px"><iframe title="TSKaigi2025_Wasmを用いて他言語資産をTypeScriptで活用する.pdf" src="https://speakerdeck.com/player/68e7a6c368c2406e8aef6813701049d0" style="top: 0; left: 0; width: 100%; height: 100%; position: absolute; border: 0;" allowfullscreen scrolling="no"></iframe></div>
<p>この登壇経験を通して、積極的に技術発信活動をしていきたいと強く感じました。自分の知識を整理し、アウトプットすることで自分自身の理解も深まることを実感しました。</p>
<p>学んだ技術を実際のプロダクト開発に活かしていくことで、より良いプロダクトを作っていきたいです。</p>
<h2>TSKaigiを満喫した2日間</h2>
<h3>企業ブースでの交流</h3>
<p>企業ブースエリアには20近くの企業がブースを出していて、各企業のブースでスタンプを集めて回るとくじが引けるというスタンプラリーもありました。</p>
<p>各企業のブースでは、TypeScriptに関するアンケートやクイズ、診断などがありました。</p>
<p>いろんな企業のエンジニアと話をしたり、各企業のプロダクトを知ることができました。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/1d5a5d6d-3de3-4a2c-a477-1cf1658cddd5/250616-01.jpg" alt="TskaiGi2025のスポンサーラリースタンプカード。各マスにカラフルなシールやロゴが貼られており、すべて集めると抽選に参加可能"></p>
<h3>豪華な駅弁でエネルギー補給</h3>
<p>2日間とも豪華な駅弁とお茶が用意されていました。</p>
<p>お弁当の数に余裕があったのか、二つ目もどうぞ〜というアナウンスもあり、二日目は私も二ついただきました。おいしかったです。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/288ea2e7-91ec-4cda-b92c-d2fea918ba2e/250616-02.jpg" alt="牛たん弁当と銀だら弁当"></p>
<h3>懇親会で広がるエンジニアの輪</h3>
<p>懇親会には数えきれないほど多くの参加者がいて、大いに盛り上がっていました。</p>
<blockquote class="twitter-tweet" data-dnt="true" align="center"><p lang="ja" dir="ltr">【<a href="https://twitter.com/hashtag/TSKaigi2025?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#TSKaigi2025</a> 終了しました】<br><br>🎊無事すべてのコンテンツが終了いたしました🎊<br>様々な形で多くの方にご参加いただきました❗️<br>ありがとうございました‼️<a href="https://twitter.com/hashtag/TSKaigi?src=hash&amp;ref_src=twsrc%5Etfw">#TSKaigi</a> <a href="https://t.co/wEjCS7rhky">pic.twitter.com/wEjCS7rhky</a></p>&mdash; TSKaigi (@tskaigi) <a href="https://twitter.com/tskaigi/status/1926234689682939990?ref_src=twsrc%5Etfw">May 24, 2025</a></blockquote>
<script async src="https://platform.twitter.com/widgets.js" charset="utf-8"></script>
<p>立食ビュッフェ形式で、たくさんの料理に加え、お寿司やケーキなども用意されており、どれもおいしかったです。</p>
<p>ドリンクもたくさん用意されていて、TSKaigi専用ビールも提供されていました。</p>
<p><img src="https://ik.imagekit.io/righttouch/91c065d6-b539-4805-9a80-232e640febd1/250616-03.jpg" alt="TskaiGi2025のロゴが入ったフルーツたっぷりの大型ケーキ。鮮やかなフルーツとホイップクリームが印象的"></p>
<p>他の登壇者や来場者の方々とも積極的に会話することができ、様々な技術的な話や経験談を聞くことができました。</p>
<p>普段なかなか会うことのできないエンジニアの方々と直接交流できる貴重な機会で、刺激的な時間を過ごすことができました。</p>
<h2>さいごに</h2>
<p>TSKaigi 2025は、私にとって忘れられない2日間となりました。この規模のカンファレンスでの登壇は初めての経験で、正直なところ緊張しましたが、それ以上に得るものが大きい貴重な体験でした。</p>
<p>登壇を通して、自分の知識を整理し、多くの方に伝える難しさと楽しさを実感しました。また、他の登壇者の方々の発表からも多くの学びを得ることができ、TypeScriptコミュニティの熱量と技術レベルの高さに改めて感動しました。</p>
<p>この経験を機に、今後はより積極的に技術発信活動に取り組んでいきたいと思います。学んだことをアウトプットし、コミュニティに貢献することで、自分自身の成長にもつなげていきたいです。</p>
<h2>積極採用中！</h2>
<p>RightTouchではコンフォートゾーンを超えてカスタマーサポート市場の改革に挑むプロダクトエンジニアを採用中です！</p>
<p>もし興味があれば、ぜひお話ししましょう！</p>
<ul>
<li><a href="https://righttouch.co.jp/recruitment/engineer">エンジニア採用サイト</a></li>
<li><a href="https://righttouch.co.jp/jobs/engineer">エンジニア求人情報の詳細</a></li>
<li><a href="https://speakerdeck.com/righttouch/righttouch-company-deck-ver1-dot-0">Company Deck</a></li>
</ul>


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